『Blieve in?』 瑠希さん・作


麻生 裕希(あそう ひろき):健くん

20歳のフリーター。コンビニでバイトをしている。



相模 和哉(さがみ かずや):長野くん

25歳のフリーター。裕希のバイト先の先輩。いろいろなバイトを掛け持ちしている。







Believe in?


「あなたはサンタクロースがいるって信じていますか?」
裕希が何気なく見ていた雑誌にそう書いてあった。


裕希(サンタクロースか...。そういえば、もうすぐクリスマスだっけ?)


ふと顔を上げるとガラス越しの街はイルミネーションで光っていた。
しばらくイルミネーションを見つめ、もう一度雑誌に目を落とすと、何かで有名な人がさっきの質問に答えていた。


「信じてますよ。本当にいますからね、サンタクロースは。いなくても夢があっていいじゃないですか。子供みたいですけど(笑)」


裕希(サンタクロースねぇ...。そういえば俺も昔は信じてたよなぁ。
毎年クリスマスになるとサンタを見るんだって夜遅くまで起きてたけど、結局寝ちゃったし。
でもサンタの正体がわかったときはかなり凹んだなぁ。)


その時、裕希の前にあるガラスを誰かが叩いた。
裕希が視線を上げると、サンタの格好をしたバイト先の先輩、和哉が立っていた。


和哉「ちょっと出て来いよ。」


口パクで和哉はそう言った。裕希は不思議に思ったが、すぐ読んでいた雑誌を棚に戻して、店を出た。
外に出ると風がすごく冷たかった。


裕希「先輩、どうしたんですか。そんな格好して...」
和哉「裕希、今日はバイト休みだよな?」
裕希「そうですけど...」
和哉「あのさ、俺のバイト手伝ってくれない?今日バイトの奴がさ、風邪ひいたって言ってさ...。」
裕希「..いいですよ。でも先輩も今日は休みじゃありませんでした?」
和哉「別のバイトの手伝いだよ。じゃあこっち来てくれる?」


裕希は黙って和哉のあとについて行った。着いた店はケーキ屋だった。


裕希「先輩ってここでもバイトしてるんですか!?」
和哉「クリスマスだけね。だって、コンビニのバイト、俺年末は仕事ないし。じゃあ早速だけど、コレに着替えてくれる?」


そう言って和哉が裕希に差し出したのは、赤い服と帽子、それに白い髭。


裕希「せ、先輩...コレって..」
和哉「俺と同じ服。ほら早く着替えて!ケーキの配達なんだから!!」
裕希「ケーキの配達!?サンタの格好でですか!?」
和哉「そう。じゃあ俺先に行くから。」
裕希「え、ちょっと先輩!!」


裕希は後を追ったが、もう和哉の姿はどこにもなかった。


裕希「は、早...。でもどうしよう...本当にコレ着るのぉ?」


裕希がそう言うと後ろから店長らしき人が来た。


店長「君が麻生くんだね?君に配ってもらうのは1丁目あたりの家だ。宜しく頼むよ。」
裕希「は、はい。」


引き受けてしまったからにはやるしかない。


裕希「よぉし、頑張るぞー!!」


ピンポーン♪


裕希「クリスマスケーキお持ちしました!」


順調に事を進めていく。


裕希「ありがとうございました!メリークリスマス!!」


1件目終了。


裕希「この調子であと32件。」


いくら臨時とはいえ、任された仕事は手を抜かないのが裕希のいいところだった。
いろいろな家を訪問してケーキを渡していっていくうちに初めは抵抗のあったサンタの格好も今はそれほど嫌と感じなくなった。


子供「サンタのお兄ちゃんありがとぉ。」


小さい子にそう言われるとすごく嬉しい。


裕希「どういたしまして。メリークリスマス!」


これですべての配達が終わった。店に戻るともう和哉は戻っていた。


和哉「裕希、お疲れ。大変だったっしょ?」
裕希「でも楽しかったです。」
和哉「そっか。」
店長「相模くん、麻生くんお疲れ様。はい、これ今日のバイト代だよ。」
裕希&和哉「ありがとうございます!!」


和哉「裕希、悪かったな。せっかくの休みにこんなことさせて。」


帰り道、裕希は和哉に夕ご飯を奢ってもらった後、公園のベンチに2人で座った。


裕希「いいですよ。どうせ俺も暇だったんで。」
和哉「結構似合ってたよ、サンタ。」
裕希「そうですか?先輩も似合ってましたよ。」
和哉「まぁ毎年やってると慣れるしね。」
裕希「毎年やってるんですか!?」
和哉「今年で7年目。」
裕希「7年も...」
和哉「このバイトしてさ、サンタって大変だなぁって思うんだ。」
裕希「え?」
和哉「だってさ、毎年クリスマスの夜中に世界中の子供たちの家にプレゼント配るわけだろ?俺絶対耐えられない。」
裕希「先輩はサンタの存在って信じてるんですか?」
和哉「いないって否定はできないな。もしかしたらいるんじゃないかって思ったほうが夢があっていいじゃない。」


裕希はさっき見ていた雑誌を思い出した。


裕希(そこでも誰かがそんなことを言ってた気がする。)


和哉「今は俺たちがサンタなわけだろ、クリスマスケーキ配ってさ、小さい子喜ばして。サンタってさ、子供に夢を与えてるんだよ、きっと。」


和哉はそう言うと、ベンチから立ち上がった。


和哉「俺たちもさ、現実ばっかり見てないで、夢を見るのもいいんじゃないかな。そしたら、こんな世界にはならなかったと思う。」
裕希「先輩...」
和哉「ま、俺が思うほど世の中そんな甘くないけどね。裕希、これからどうする?」
裕希「どうするって...」
和哉「俺さ、家帰っても暇なんだよね。誰もいないし...。家来ない?」
裕希「いいんですか!?」
和哉「今日のお礼。男二人で寂しいけどさ。」
裕希「構わないです!お邪魔します!」


2人のサンタはそっと公園を出て行った。


その上を赤い何かが通って行ったといことも知らずに。





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