『チェーンメール』 岡田純恋・作

坂本君…宮田俊一(みやた・しゅんいち)28歳。政人の兄。
長野君…坂下良哉(さかした・りょうや)28歳。俊一の親友。
イノッチ…細山勝弥(ほそやま・かつや)27歳。浩太の家庭教師。
剛くん…宮田政人(みやた・まさと)19歳。フリーター。俊一の弟。
健くん…新井浩太(あらい・こうた20歳。大学進学を目指す浪人生。
准くん…嘉原光輝(かはら・こうき)19歳。フリーター。政人の親友。






チェーンメール



ある日…一人の男の携帯にメールが入った。


〜♪〜〜♪〜♪♪〜♪


光輝:誰からのメールだぁ??…政人からだ。


『今から5人の人にこのメールを回そう!5人の人に回せば…
@好きな人から告白される。A学生の人は急激に成績が良くなる。
B彼氏or彼女がいる人は今以上にラブラブに。
この3つのいい事のうち一つは叶います!さぁ早く!Fw:は消して転送しよう!』


光輝:…くだらねぇなぁ。。まぁいいや。暇だから一人だけ回してみよっと。えーっと、、浩太に回してやれっ!


♪〜♪♪〜〜♪♪♪〜〜♪


浩太:あっ、メールだ!
勝弥:浩太!勉強中は電源切っとけって言っただろ!
浩太:ゴメンなさい。。切ります。
勝弥:…で?誰から?彼女?彼女??
浩太:そんなんじゃないですよ。彼女いないし。。…友達からです。チェーンメールです。
勝弥:チェーンメール?面白いな!回してみろよ♪
浩太:…はぁ?…俺はこんな人に習ってていいんだろうか…。。えーっと、、5人に送信!っと…。


その数日後。政人と光輝が二人で会った時の事。


光輝:なぁ政人〜、チェーンメールばっか送るのやめろよな!
政人:面白いんだもん♪俺だって一人しか、光輝にしか回してねぇよ。
光輝:…あ、あれ、浩太じゃねぇ?おーい!浩太!!
浩太:あっ!光輝!政人!
政人:よっ。予備校生。どうだ?勉強の方は。
浩太:ねぇ!聞いてよ!今、予備校で模擬テストやって来てさぁ、絶対無理だと思ってた数学と化学がさぁ、なんと満点取れたんだよ!!
    しかも模擬テスト受けた受験生の中で俺がトップの成績になってさぁ!!ビックリしたよ!
政人:マジでぇ!?すげぇな!!良く頑張ったな!
浩太:もしかして…当ったのかな。あの、光輝からのメール。。
光輝:えっ?
浩太:ううん!何でもない!さぁ〜て!勝弥先生に報告しないと!!じゃあね!
政人:…光輝が送ったメール??
光輝:…まさか!(携帯を取り出してメールを確認する)…コレ、、政人からのチェーンメールのA番目のいい事…
    『急激に成績が良くなる』…。
政人:お前が送った一人の人って、、浩太?
光輝:うん。浩太にだけ送った。。
政人:…まっ、まさかぁ!偶然だよ!偶然!浩太が頑張ったからだよ!
光輝:そうだよな!こんなのが現実になるなんてありえねぇもんな。


その日の夜…政人の家で。。


政人:ただいまー。
俊一:おかえり。良哉来てるよ。
政人:あ、どーも。
良哉:お邪魔してます!
政人:オヤジとオフクロは?
俊一:まだ仕事から帰ってないよ。
良哉:それでさぁ、さっきの話だけど、俺の妹に回って来たチェーンメール、妹が回したらしいんだよ。5人に。
    そしたら、大好きな人から告白された!って狂喜乱舞しててさ。何か関係あんのかなぁ?
政人:…良哉さん、その妹さんに回ってきたチェーンメールの内容って、どんなのですか?
良哉:確かねぇ、3つのいい事があって、5人に回せばその3つのうちの1つは叶うっていうチェーンメールで、、
政人:えぇっ!?
俊一:どうした?
政人:あっ、、いや…何でもない。。…良かったですね!妹さん…。
良哉:うん、まぁ不思議だけど、本人が喜んでるからいいかなぁと思って。


〜♪〜♪♪〜〜〜♪♪〜♪♪♪


政人:あっ、メール…。。…チェーンメールだ…。。

『このメールが来たあなた!3人の友達に転送しないと、不幸な事が起こります。
付き合っている人がいる人は振られちゃったりしますよ!その代わり、ちゃんと転送した人には好きな人に告られたりしちゃいます』


政人:…嘘だよ。こんなの。。浩太も、良哉さんの妹さんも、、偶然だよ…。


全く信じないでメールを一人も回さなかった政人。その数日後…


♪〜♪〜♪〜


政人:あ、着信だ。もしもし?
女:『もしもし?政人?』
政人:おぉ〜どうした?あ、今から会えないかって?いいよぉ〜今から、
女:『別れよう…』
政人:えっ?
女:『ゴメン!他に好きな人が出来ちゃって…別れて下さい。。お願いします!』
政人:はぁっ?ちょっと待てよおい!
女:『ゴメン。じゃあね…』
政人:そんな……何で突然…、、あ、まさか!!…このチェーンメール…『付き合っている人は振られたりします』…
    このメール、回してない…。。


♪〜♪〜♪〜


政人:今度は誰だ!もしもし?
光輝:『あ、俺!光輝だよ!聞いてくれよ!お前も知ってると思うけど、俺と同じ高校でクラスメートだった女の子、
   俺ずっとその人のこと好きだったんだ。その人から告白されちゃってさぁ!!即OKしたよ!!』
政人:…お前まさか、、3人の友達に転送しないと恋人に振られる…っていうメール回って来たのか…?
光輝:『えっ?…あぁ、来たよ。3人に回しちゃった。』
政人:…お前は…3人に回したから好きな子から告られたんだ…
光輝:『えっ?あぁそういえば、そんなような事書いてあったね。でもまさかぁ!』
政人:俺にもそれ回って来てさぁ、くだらねぇと思って一人も回さなかったんだ。そしたら、たった今、、彼女に好きな人がいるからって
    振られて…。。
光輝:『マジで…?嘘だろ?』
政人:本当だよ。…おかしいよ!!今も兄ちゃんの友達の良哉さん来ててさぁ、良哉さんの妹が浩太に回って来たのと
    同じメールが回って来て、ちゃんと5人に回したら好きな人に告られたって言ってたんだよ!浩太といい俺といいお前といい…
    何なんだよ!俺ら呪われてんのか!?
光輝:『何なんだよ…誰に操られてんだよ!俺らはよぉ!』


それから数週間後。あれからチェーンメールは回ってこず、誰もがチェーンメールの怪事件は忘れていた。その時…事件は起こった。


♪〜♪♪〜♪〜♪


光輝:ん…誰だぁ??うたたねを起こしやがって…。。メールだ。…誰だぁ?このアドレス…。誰かメルアド変更でもしたのかな??


『このメールが来たら10分以内に5人に転送しろ。そうしないとお前は交通事故にあって命を落とす事になる。。………』


光輝:んぁあ〜〜もうまたくだらねぇの送って来やがって!誰からか分かんねぇし…テレビでも見よっと。


≪たった今、事故のニュースが入って来ました。今日午前11:45分頃、○○国道でトラックに跳ねられて20歳の男性が亡くなるという
事故が発生しました。男性は手に携帯電話を持っており、画面にはチェーンメールらしきメール文章が映し出されていました。≫

光輝:……チェーンメール…事故…??…まさかっ!!このチェーンメール……あれ?このメール、まだ文章続いてる…


『お前含め、お前の知り合い6人に同じメールを回した。助かりたいなら10分以内に5人に転送する事だ。』


光輝:6人の知り合い……政人に電話してみよう…。。…あ、政人?お前今、チェーンメール回って来なかったか?
政人:『ん?回って来たよ。交通事故だとかワケわかんねぇメールが。俺の兄ちゃんにも回って来たみたい。』
光輝:早く!早く回せ!!今ニュースで、チェーンメールが映し出された携帯を持って交通事故にあって亡くなった男性のニュースが
    やってるんだよ!!お前とお前の兄ちゃんに回ってるって事は…勝弥先生と良哉さんと浩太が危ない!!
政人:『嘘だろ!!』
光輝:いいから早く回せ!兄ちゃんにも回せって伝えろ!俺も、今すぐ回すから。勝弥先生と浩太には今から俺が連絡する!
    良哉さんにはお前の兄ちゃんから頼む!それと、、俺ら狙われてんじゃねぇかって思って。。誰だか知らない奴から回って来て、
    俺ら6人に回したって言うんだぞ?安全な場所に6人集まろうぜ!今から○○公園に集合!兄ちゃんにも伝えろ!
政人:『分かった!お前も早くメール回せよ!』
光輝:…くっそぉ…数週間前のメールといい、何で俺らばっかり狙われてんだ…。。


浩太:はぁ?何?
光輝:『だから!チェーンメール回って来てないか?勝弥先生と浩太に!』
浩太:分かんないよ。二人とも勉強中は電源切ってるから。
光輝:『緊急事態なんだよ!今からそのメール文章とニュースを見ろ!それと、今から○○公園に集合だ!いいな?じゃあな!』
勝弥:どうしたぁ?声デカくて聞こえてたけど。何?メールとニュース?
浩太:テレビ付けますね。ニュース…やってます。
勝弥:このメール。。
浩太:俺のとこにも届いてます。。
勝弥:俺ら…狙われてんのか?何者かに…。。もういい!今日は勉強終わりだ!早くメール回せ!危険だから二人で○○公園に行こう!
浩太:はい!


良哉:えっ?メール?
俊一:『そうだよ!ニュースで何やってる?』
良哉:…交通事故のニュースがやってるけど。
俊一:『そのニュースとメールを見比べてみろ!早くそのチェーンメールを回すんだ!それと今から○○公園に集合だぞ!いいな!』
良哉:えっ?……亡くなった人の携帯にチェーンメールが…。。俺にも…メールが…。。


光輝:みんな遅せぇよ…あ、政人!兄ちゃん!こっち!!
政人:みんなは?
光輝:まだ…連絡したけど、まだ来てない。。
俊一:大丈夫かな…まさか、現実になってたり…。。
勝弥:おーい!!
俊一:勝弥先生!浩太も!
浩太:良かった。。無事なんだね。
勝弥:まだ、、良哉さんが来てないみたいだけど…。
政人:みんな、回したのか?5人に。。
勝弥:回したよ。回したけど、、知らない奴からメール着て。。誰かに狙われてるんじゃないかって怖いんだけど…
浩太:怖いのはみんな一緒だよ。みんな知らない奴からメール来てるんだから。。
俊一:良哉遅いな。。大丈夫かな…。。
光輝:あ、良哉さん!
俊一:えっ、どこ?…あ、いた!良哉!!…あいつ、歩きメールしてるぞ。
勝弥:まだメール送り終えてないのかな…
良哉:あ、みんな!
俊一:良哉!まだ送ってないのか?
良哉:あと一人だよ!あと一人送る!
政人:あぁっ!!良哉さん!!まだ赤信号!!
光輝:トラックが!!!危ないっ!!
俊一:良哉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――!!!!
浩太:うわあああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――っっっ!!!!!


勝弥:…良哉、、良哉さん…良哉さん…??
俊一:早く!救急車!!
良哉:…待って…。。……見てよ携帯画面。ギリギリセーフで、、…送信完了……!!
トラック運転手:こらぁ!!危ねぇじゃねぇか!!ふざけんな!
良哉:スイマセン!失礼しました!!
俊一:…はぁ〜〜良かったぁ〜!!!
政人:良かった。。本当に良かった!
光輝:ギリギリセーフで送信完了とは…
浩太:怖くて泣きそうになっちゃったよぉー!!
勝弥:大丈夫だよ。。浩太…。
俊一:良かった、、本当によ良かった!!6人とも無事で…。。
良哉:でも、、誰なんだろう…俺ら狙ってる人って…誰のアドレスなんだ、コレ。。?


その後は6人でなるべく安全な場所に集まるなどして、恐怖に怯えながらも過ごしていた。
しかしそれからチェーンメールは1通も来ることなく、あの時6人が送った、それぞれ5人へのチェーンメールは、
その宛先に届いていない。どこかで消えていた。その宛先とされた5人にも不幸が起こる事なく、
何事もなかったかのように時は過ぎ去った。


今だに……誰からのメールなのか…誰にも分からないままでいる………





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