『Real friends』 瑠希さん・作

高岡 透(たかおか とおる):坂本昌行
27歳の会社員で尚人の幼馴染。2年前の事故に巻き込まれている。

増井 尚人(ますい なおと):長野博
2年前、交通事故で死んでしまった。

谷口 祥太(たにぐち しょうた):井ノ原快彦
24歳の新入社員で透の部下。事故のことを透から聞いて以来、透の良き相談相手。

結城 佳祐(ゆうき けいすけ):森田剛
18歳の高3で拓人の親友。2年前に拓人が逝ってから、心を閉ざしてしまう。

増井 拓人(ますい たくと):三宅健
尚人の弟で、2年前交通事故で死んでしまった。

松崎 陽平(まつざき ようへい):岡田准一
18歳の高3で拓人の幼馴染。佳祐とはクラスメイト。






Real friends



アナウンサー:今日も東京は1日暑くなりそうです・・・


まだ暑さが残る9月中旬。
街を行き交う人々はハンカチを手に持ち、汗を拭う。
そんな光景を、透はオフィスの窓から眺めていた。


 透:(もうすぐ・・・だな)


祥太:高岡さん、資料を作成しておきました。
 透:・・・・・
祥太:高岡さん?
 透:・・あ、谷口・・どうした?
祥太:会議の資料を作成しておきました。
 透:あ、ありがとう。


今年の春に入社したばかりの谷口祥太は、透の部下であり、また唯一の透の相談相手でもあった。


祥太:高岡さん、どうしたんですか?また暗い顔してますよ。
 透:・・ちょっとな。
祥太:尚人さんたちのことですか?
 透:・・ああ。
祥太:何かあったんですか・・。
 透:なぁ、今夜また付き合ってくれ・・・。
祥太:わかりました。


それだけ言うと、祥太はデスクに戻って行った。


陽平:もうすぐだな、拓人と尚人さんの命日。
佳祐:・・・・・・・


下校中 、不意に陽平が佳祐に言った。


陽平:透さんも来るのかな?
佳祐:・・・・・・・
陽平:・・・・そうだ、佳祐・・今から俺んち来ない?
佳祐:・・・・・・・
陽平:佳祐?
佳祐:行かねぇ。
陽平:そう・・・。


佳祐は拓人の親友でいつも一緒にいた。
だが、拓人が亡くなって以来、心を閉ざし、あまり話さなくなった。


陽平:じゃあ、俺こっちだから・・。
佳祐:・・じゃあな。


祥太:で、どうしたんですか?


カウンターに座り、一通り注文を済ませた後、祥太は透に聞いてきた。


 透:・・もうすぐ2人の命日なんだよ。
祥太:そうなんですか・・・。


透は、尚人の運転する車に同乗していた。
しかし、その車が事故に巻き込まれ、透だけが奇跡的に助かったのだった。


 透:俺・・今でも思うんだよ・・どうして俺だけ助かったんだって。
祥太:高岡さん・・・。
 透:尚人は、ずっと夢に見続けた仕事にやっと就けたんだよ・・。
   拓人くんだって・・高校に入学してまだ半年ぐらいしか経ってなかったのに・・・。俺が2人の身代わりになってやりたい・・・。
祥太:えっ?
 透:俺が死んで、尚人たちが助かれば・・・
祥太:そしたら、尚人さんたちも高岡さんと同じこと言ったと思いますよ。自分が死んで高岡さんが助かればよかったのにって。
 透:谷口・・・・
祥太:墓参り、俺も行っていいですか?
 透:ああ。


その後、透と祥太は遅くまで飲んでいた。


9月某日、この日も朝から暑かった。


祥太:・・・・高岡さん、大丈夫ですか?
 透:大丈夫だ。


透は尚人たちの墓に近づくにつれ、だんだんと速度が落ちる。
たぶん彼らに会うのが辛いのだろう。自分だけが助かってしまったのだから。


祥太:次の角、どっちに曲がるんですか?
 透:右に曲がって、それから・・・・!?
祥太:高岡さん?どうしたんですか。


透の目には尚人たちの墓の前で手を合わせている少年2人が映った。


 透:陽平くん・・・・!?
祥太:あ、ちょっと高岡さん!!


陽平:佳祐、そろそろ行こっか。
佳祐:・・・・・
陽平:俺、先行くよ・・・・・透さん!?
 透:陽平くんたちも来てたんだ。
陽平:はい。
 透:君は、確か佳祐くんだたよね。拓人くんと仲のよかった・・・
佳祐:・・んでだよ・・
 透:え・・?
佳祐:なんで、あんただけ助かったんだよ!!


佳祐は透の胸倉をつかんで言った。


 透:・・・・・
陽平:け、佳祐やめろって!


陽平に止められた佳祐は、透を睨みつけて去っていった。


『なんであんただけ助かってんだよ!』


その言葉に透は何も言い返せなかった。
言い返す言葉が無かったという方が正しいかもしれない。


陽平:透さん、すみません。あいつ・・佳祐は、拓人が死んだなんて未だ信じられないみたいで・・・。
 透:・・・・・・。
陽平:透さん、佳祐の言ったこと・・気にしないでください。


そういい残すと陽平は、佳祐の後を追っていった。


祥太:・・・高岡さん?
 透:・・そりゃ恨まれるよな。俺だけ助かったんだから・・。
祥太:高岡さん・・・。
 透:谷口、そんな顔すんなよ。俺は大丈夫なんだからさ。


陽平:佳祐、何で透さんにあんなこと言ったんだよ!
佳祐:・・・・・・。
陽平:聞いてんのかよ、なぁ佳祐!
佳祐:うるせぇよ!お前には関係ねぇだろ!?
陽平:関係あるよ!透さんには小さい頃から面倒見てもらったりしたんだよ!・・透さんだって2人が亡くなったこと未だ信じられないだよ!
佳祐:・・・・・・。
陽平:今でも、何で自分だけ助かったんだって自分を責めてさ・・。佳祐も信じられないんだろ、拓人が・・・・
佳祐:うるせぇつってんだろ!
陽平:佳祐・・・。


佳祐はそのまま何処かへ行ってしまった。


 透:悪いな、今日も付き合わせて・・・・。
祥太:そんなの構いませんよ。


〜♪〜〜〜♪〜〜


祥太:高岡さん、携帯鳴ってますよ。
 透:誰だろ、こんな時間に・・・。もしもし・・
陽平『あ、透さん?』
 透:陽平くん・・・・!?
陽平『こんな時間にすみません。あの・・・』
 透:どうした?
陽平『佳祐が・・いないんです、何処にも。』
 透:え!?
陽平『家にもまだ帰っていないらしくて・・・』


透はふと時計を見た。もう日付が変わろうとしている。


 透:わかった、俺らも捜す。陽平くん、今何処にいるんだ?


隣街の公園のベンチに佳祐は座っていた。目にうっすらと涙を浮かべながら・・・。


佳祐:・・んで、なんで拓人が死ななきゃなんねぇんだよ。
 ?:佳祐、もう透さんを責めないで・・・。
佳祐:えっ・・・・・。


 透:陽平くん!
陽平:あっ、透さん。
 透:佳祐くんが行きそうなところとか、心当たりないのか?
陽平:あるところは全部捜しました。
祥太:こんな時間に高校生が行くところなんかねぇよな・・。
 透:でも、早く佳祐くんを捜さねぇと・・・
 ?:佳祐くんなら、隣街の公園にいるよ。
 透:隣街か・・・・・えっ!?
陽平:あっ・・・
祥太:!?


突然、3人の前に人が現れた。


佳祐:拓・・人!?
拓人:久しぶりだね、佳祐。
佳祐:たく・・・・なぁ、死んだなんて嘘だよな・・?
拓人:佳祐・・・
佳祐:なぁ、拓人・・嘘だって言ってくれよぉ!!
拓人:・・・・・・。


佳祐は、拓人にしがみついて泣いていた。
そんな佳祐を見て、拓人はしばらく何も言えなかった。


 透:尚・・人・・
陽平:尚人さん・・・
祥太:この人が・・・
尚人:ほら、佳祐くん捜してるんでしょ?今拓人と一緒にいるからさ、ついて来て。


 透:なぁ、本当に尚人なのか!?
尚人:何?透、もう幼馴染の顔忘れた?
 透:そうじゃなくて、なんでここに・・・
尚人:そのわけは後で教えるからさ。
 透:そうか・・・・。


拓人:落ち着いた?
佳祐:・・・・・・
拓人:でも、まさか佳祐が人前で泣くなんてね(笑)
佳祐:・・何が言いてぇんだよ。
拓人:ん?別に何も。・・あ、お兄ちゃんたちが来た。
佳祐:え?
陽平:佳祐ー!!
佳祐:陽平!?
拓人:佳祐を心配して捜してたんだよ。陽平も、透さんも、谷口さんも。
佳祐:俺を・・・!?
 透:良かった・・佳祐くんが無事で・・・。
佳祐:透さん・・。・・・なんで来たんだよ、俺酷いこと言ったのに・・・
 透:そんなこと今は関係ないだろ?
陽平:そうだよ、佳祐。透さんは本当に佳祐のこと心配してたんだよ。
佳祐:・・・・・・。
尚人:さて、皆そろったことだし。そろそろ俺たちがここにいることについて説明しようか。
拓人:僕とお兄ちゃんがこっちの世界に来たのは、あの事件の誤解を解くためなんだ。
佳祐:誤解?誰が誤解なんかしてんの?
尚人:透だよ
 透:え・・俺!?誤解ってどういうことだ?
尚人:俺と拓人は即死だったのに、透だけが奇跡的に助かった。どうしてだかわかる?
 透:いや。
拓人:僕たちが助けたんだよ。
 透:え!?
尚人:病院に運ばれた時、透は意識がないだけで、目覚めれば助かる状態だったんだ。
   だから目覚めさせたんだ、俺たちの力で・・・。透には俺と拓人の分も生きて欲しかったから。
 透:・・・・・・
尚人:だからもう、自分を責めないで欲しいんだ。俺たち、あれから透のこと見てたけど、もう見てられなかった。
   ずっと自分を責めて、自分を見失ってたから・・・。
 透:尚人・・・
拓人:もう、自分が身代わりになりたいなんて思わないで・・・。
 透:わかった、俺生きるよ、2人の分も。
尚人:透、ありがとう。
 透:礼を言うのはこっちの方だよ。ありがとな、助けてくれて。それから・・戻ってきてくれて・・・。


そう言った透の目からは涙がこぼれた。


尚人:透・・泣くなよ。
 透:お前だって泣いてるくせに。


拓人:佳祐も、もう透さんを責めるなよ。
佳祐:わかってる、透さんには本当に酷いことをしたって思ってる。
拓人:それから、心閉ざすのもやめろよな。僕が居なくても佳祐には陽平がいるでしょ?
   今では陽平に何でもぶつけることが出来るようになったんじゃない?それにさ、透さんもいるし。
   谷口さんだって、会ったばっかりの佳祐を必死で捜してくれたしさ。佳祐は1人じゃないんだから。
佳祐:拓人・・・
拓人:陽平、佳祐のこと頼むね。
陽平:わかったよ。


佳祐と陽平の目にも涙が浮かんでいた。


尚人:これで仕事も終わったな・・。
 透:戻るのか?
尚人:そろそろね。ほんの数時間しかここに居られないんだ。
 透:そっか・・。
尚人:そんな顔すんなって。またお墓参り来てよ。そしたら会いに行くからさ。それから・・・谷口さん。
祥太:は、はい。
尚人:今まで透の相談に乗ってくださってありがとうございました。
祥太:いえ、そんな・・。
尚人:これからも透のこと、宜しくお願いしますね。
祥太:こちらこそ宜しくお願いします。
 透:・・尚人、母親みたいなこと言うなよ!谷口も、んなこと言わなくていいんだよ!
尚人:ゴメン(笑)
祥太:スミマセン。


陽平:拓人も行くの?
佳祐:また、戻って来いよ。
拓人:うん、ありがとう。佳祐、陽平と仲良くね。
佳祐:わかったよ。
尚人:拓人、時間だよ。
拓人:はぁい。じゃあね佳祐、陽平。
佳祐:じゃあな。
陽平:またな。
 透:尚人も戻って来いよ。
尚人:はいはい。


そして、2人は消えていった。


課長:結城くん、これもお願いできるかな?
OL:結城さん、この資料なんですけど・・・。

祥太:すごいですね、佳祐くん。新人なのに、皆から頼られて。
 透:谷口も去年はそうだったぞ。
祥太:そうですかぁ?


あれから半年。
佳祐と陽平は高校を卒業し、陽平は大学へ、佳祐は透たちが勤めている会社に入社した。


佳祐:高岡さん、この前の資料が出来ました。
 透:ああ、ありがとう。・・そうだ、もう飯食った?
佳祐:いえ、まだですけど。
 透:じゃあ今から行かないか?
佳祐:はい。用意してきます。
 透:谷口も行くだろ?
祥太:はい。


透が2人を連れてきたのは、喫茶店だった。


祥太:えっ・・高岡さん?ここ喫茶店ですよ。
佳祐:ここで昼飯食うんスか?
 透:嫌なら帰れ。
祥太:・・・ご一緒させて頂きます。
佳祐:俺も・・・。


店員:いらっしゃいませぇ!


3人が店内に入ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


陽平:あっ透さん、谷口さん、佳祐も!
 透:久しぶりだな。
陽平:そうですね。


祥太と佳祐はお互いに顔を見合わせた。2人は透がここに連れてきたわけをようやく理解した。


佳祐:陽平・・ここで働いてたのか?
陽平:あれ、言ってなかったっけ?
佳祐:聞いてねぇよ。で、大学は?
陽平:夜に行ってるよ。昼間はここでバイトしてんだ。
祥太:大変だね。
陽平:そうでもないですよ。楽しいですし。


そんな4人の会話を聞いている2人の姿があった。


拓人:うまくやってるみたいだね。
尚人:うん。もう大丈夫みたい。
拓人:そろそろ帰ろっか、僕たちも。
尚人:そうだね、見つからないうちに。


陽平:あれ?
 透:どうした?
陽平:なんか拓人たちの姿が見えた気がする。
佳祐:え、何処!?
祥太:何も見えないよ。
 透:・・見に来てたのかもしれないな。
佳祐:何を?
 透:俺たちを。


もう自分たちは1人じゃない。
なんでも分かり合える友達、仲間がいること。
真の友達がいるということを、2人は教えてくれたのかもしれない。


数分後、彼らは店を出た。


 透:さ、あと半日頑張るぞ。
祥太&佳祐:はい。

また夏がすぐそこまで来ていた。





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